2024年4月20日土曜日

【館長ブログ】山下大五郎展 子どもたちの心に残る展覧会であればと願います

 山下大五郎展 一路~自然の中の生命を求めて~は、2024年1月11日~3月30日までの3か月間開催しました。

山下大五郎展は2010年に北アルプス展望美術館にて開催されて以来、14年ぶりの展覧会となりました。ご家族の所蔵している70点余りの作品と、北アルプス展望美術館所蔵の5点の作品をお借りし、山下先生の画家人生をたどる4つの時代に分けて、2期にわたり展示を行いました。先生の描く安曇野の風景に魅了された多くのファンがご来館されましたが、安曇野以前の作品を初めてご覧になる方も多く、戦前・戦後の作品には驚きの声があがりました。

「帰ってきた人」1956年

本物の作品を子どもの頃から鑑賞することの大切さは、美術館開設当初より感じておりましたので、本展覧会ではアートコミュニケータの協力を得て、おおぐろの森小学校、西初石中学校の児童生徒706名の鑑賞授業を実施しました。子どもたちは素直な感想を自由に話したり、伝え合ったりしていました。美しい日本の原風景が、子どもたちの心に残ってくれたらと願います。



また毎週末、山下先生のご長男の圭一様がご来館され、生前の山下先生のお話しをお伺いできたのは貴重な時間となりました。圭一さんはご来館されたお客様とも親しくお話をされ、作品の魅力をより深く感じていただけたと思います。


この展覧会では、出会いがいろいろありました。

まず、山下大五郎展が当館で開催できたいきさつです。山下先生が銀行の美術サークルの講師として指導していたときの生徒さんが偶然ご来館され、そのお話の中で圭一さんをご紹介いただけることになり、開催の運びとなりました。

次に、14年前の展覧会の図録を編集された小林明様がご来館されたことです。図録は山下先生の人生を知る貴重な資料で、詳細な記録に驚かされました。こちらの図録がなければ展覧会の副題や展示方針が思いつかなかったことでしょう。小林様とお話しできたことに大変感激しました。

最後に、先生が愛した安曇野の地である長野県の池田町の広報誌や、池田町観光協会のパンフレット等をお配りし、先生が絵画に残した田植えの季節にぜひ北アルプス展望美術館を訪ねていただけるよう、たくさんのお客様と会話が弾みました。

本展覧会が山下大五郎という存在を、再び多くの方々に知らせる機会となったのであれば幸いです。

「安曇野田植え」1990年

2024年1月24日水曜日

【館長ブログ】木原和敏展 各地からファンが集う

 木原和敏先生に初めてお会いしたのが2006年でした。その後、個展や白日会展、日展で作品を拝見したり、先生のお話しを伺ったりする機会がありました。私には美術館を開設した当初から先生の展覧会を開催したいという考えがあり、7年目にしてようやく開催の運びとなりました。

人物画のみの展覧会は当館にとって初めての試みでした。風景画とは異なり、お客様が作品から受ける印象がどうなのかと気になる点がありましたが、木原先生が描く女性の美しさや優しさ、何気ない仕草が、観る人に穏やかな心持ちをもたらしてくれた印象を持ちました。

絵を描いている方たちからは、木原先生の筆致と細部の技巧に驚きの声があがり、何度も長い時間をかけて鑑賞していらっしゃる様子も見られました。

ちょうど日展の時期と重なったこともあり、全国に巡回するまでの間、出品作品「空模様」を当館で展示することができました。日展の会場では見られなかった方にも鑑賞していただくことができ、大変嬉しく思いました。

「空模様」2023年

木原先生のファンの方が、遠くは鹿児島など全国各地からご来館されました。そうした来館者に対し、とても親切に親しくお話しされるのを拝見して、先生の魅力は作品に留まらずお人柄にもあるのではと感じました。

木原先生には会期中、ギャラリートークやクロッキー・水彩画の実技、また美術クラブの生徒さん向けの講義など、たくさんのご協力をいただきました。生徒の皆さんが先生を取り囲み熱心にお話をする光景はとても素晴らしく、子どもたちの良い思い出になってくれればと思いました。

木原和敏展が、新たな出会いと新たな発見の場になったのであれば幸いです。

「余韻」2023年


2023年10月18日水曜日

【館長ブログ】アートの卵2023 子どもたちの成長を感じました

 流山市内中学校10校の美術部合同展「アートの卵2023」が、8月4日~27日に開催されました。美術部の生徒さんと卒業生、先生の作品、総数92点の作品が展示されました。

前回は、風景画や静物など写実的な作品が多く見られましたが、今回は生徒の皆さんの想像の世界や心の中を表現した作品など考えさせられる作品が多く、どんな思いを持って描いたのか聞きたくなるような印象を持ちました。油彩作品の中には絵の具をしっかり塗り込み、複雑な色を表現するなど驚くほどの感性を感じました。

二回目の展覧会でしたが、生徒さんのひたむきな努力と豊かな表現を、ご来館されたお客様や保護者の方も感じられたのではないかと思います。

この展覧会で嬉しいことは、前回出品した生徒さんに再会したときです。身体的成長だけでなく作品も成長していることです。

アートの卵展がこれからを生きる生徒の皆さんの力になればと思います。次回、どんな作品と出会うのか楽しみになりました。



アートの卵2023


個性的な作品の数々

2023年9月22日金曜日

【館長ブログ】中嶌虎威展 色彩の美しさに驚き

 今年の夏は例年にも増して猛暑が続き、芝生の緑も色あせる状況でした。6月7月の展覧会は、中嶌虎威先生の傘寿(80歳)を記念しての展覧会でした。中嶌先生の作品は岩絵具の豊かな色彩と線描により表現された作品で、来館した方々が「色彩の豊かさと艶やかさに感動しました」「構図も現代的な感じがします」という声を聞くことができました。日本画のもつ豊かな表現をまた一つお伝えする展覧会であったのではないかと感じました。

当館開設当初は洋画を中心に展示や展覧会を考えていましたが、作家が情熱をもって制作した作品であれば積極的に展示をしていきたいと考えています。中嶌虎威展はそのことを再認識する展覧会でした。

先生のこれからのご活躍をお祈り申し上げます。






2023年5月28日日曜日

【館長ブログ】櫻田精一展 多くの出会いがありました

 1月11日から始まった「櫻田精一展 気韻生動~刻の流れをみつめて~」が5月28日に終了しました。5か月という期間の展覧会は当館始まって以来の長期にわたる展覧会でしたが、多くの櫻田ファンのご来館がありました。


作品が好きだったり、先生と関わりがあったりと、来館される理由は様々でしたが、何よりも驚かされたことは当館が発信する展示動画をご覧になった方が多く訪れたことです。遠くは福井県や、京都府から、どうしても直接作品を見たいとご来館されました。


元は、コロナウイルス感染症の流行で展覧会に来られない方のために始めた動画の発信でしたが、遠方の方々に作品の魅力を伝え、ご来館のきっかけとなることが今回わかりました。


当館は小さな美術館ですが、これからも全国の美術ファンの目に留まるよう、たくさんの作家や作品を紹介できる展覧会を開催していきたいと思います。


『冬の修道院』1978 櫻田精一